アウトドアはどうなるのか?

ボーダレスな可能性。

アウトドアがなんなのか結果的に我々は認識しきれていないように感じます。簡単な市場調査をしてみれば分かりますが、一般的にアウトドアは山とか川とかを想像しますが、市場のカテゴライズで言えばスポーツもレジャーすべてもアウトドアに含まれます。日本でのアウトドア用品のトップ企業はアルペンである(売上約2300億円)とするデータがいろいろ出てきますが、ここにはゴルフやスキーなど、あらゆる道具類も含まれます。しかし「キャンプ」というカテゴリーでいうならば、市場の様相は一変します。たとえば三条市のスノーピークは、業界5位に躍り出ることになります。さて、我々が考えるべきアウトドアとはなんなのでしょう。

仮に「家の外」がアウトドアの定義だとしてみましょう。すると、家の内側で必要なものが一式必要であるということになります。分かりやすく言えば、衣食住の全て。格納して置く場所はどこでしょう。倉庫、というわけにはいかないですね。それならば、家で良いということになりますし、家から家に移動したということとほぼ同義です。となれば、移動手段としても格納場所としても両立する場所となります。つまり車はだいぶニーズに応えてくれる存在ということになります。もちろんそれ以外もあるでしょう。別荘はそうでしょうし、もちろん倉庫といった存在も十分にニーズに応えられる可能性はあります。お気に入りの場所の近くにあればいいのですから。

ではそこに載せることのできる衣と食はどうでしょう。まず小さいか、折り畳めるか、格納できる仕掛けがなければ入りません。洗濯できる仕組みがあれば、少量をずっと使い続けることが可能になるかもしれませんが、干す場所に困りますかね。ロープ一本と洗濯バサミがあればいいですかね。コインランドリーみたいなものを利用すれば、ある程度の量さえあればなんとかなりますね。とはいえ、街で着るような服ばかりでは汚れた時の洗濯には困りますね。ある程度汚れが落ちやすく、乾きやすく、丈夫で保温性能に優れたり、夏には涼しくなったり、匂わなかったりするのが便利ですね。食はどうでしょうか。素材から作るのであれば、調理できる道具が必要ですね。三徳包丁では持ち運びが危険ですし、まな板や鍋やコンロ的なものはどうしましょうか。ひとつひとつ、便利なものがあるといいですね。

セットアップされている。

スポーツの領域ももちろんアウトドアですね。すると、衣食住とは異なるもっと様々なものが必要になります。なんのスポーツでも、たいてい専用の道具が必要です。装備品と呼ばれることもあります。これは、専門的な話に近いですね。たとえば美容師には専用のハサミが必要ですが、皮職人が使うものとは異なります。これは類似のアイテムの話ですが、サッカーと野球では、完全に別のものを用いますね。衣食住から離れると、だいぶ専門領域が異なってくるようです。

ということは、アウトドアという分野を考える時は「家の外」で必要な衣食住に該当する部分で生じるニーズと、その先にある専門的に分岐する分野で生じるニーズの両方があるということになりますね。となると、キャンプという領域は、純粋にアウトドアでの衣食住を楽しむということになるでしょうし、登山になれば衣食住を楽しむだけでなく命の危険を伴う山に登るための装備がそこに加わるということになります。マクロ的に被る領域と、ミクロ的に異なる分野がセットになっていくということですね。なんだかだいぶ、アウトドアの考え方が整理できたような感じがします。

デフォルトになる変化。

現代において、アウトドアとインドアはほとんどニーズに変化がなくなりつつあります。最大の理由は素材の進化や、世代交代による認識の変化など、様々な要因の蓄積の結果があります。たとえば、速乾性のある素材をスーツに仕上げても、違和感のない見た目にできるようになりました。東日本大震災の時には、都内が計画停電を経験したことで、今につながるリモートワークの黎明を経験し、あれから10年後のコロナ禍において社会にある程度定着したことで、在宅での過ごし方に変化が生まれました。

ITバブルの結果、Tシャツとジーンズでビジネスをこなす人たちが現れ。スポーツファッションが日常生活や、ビジネスシーンの洋服として受け入れられていくのも、そんなに昔の話ではありません。SNSの発達、ファッション領域の変遷、ひとつひとつがすべて蓄積になっています。したがって、日常の衣食住と、アウトドアの衣食住がマージしつつあり、また素材一つとってもそこまで違いがなくなり、異なる点は持ち運び前提か否かといった用途になってきているようにも感じます。

となると、アウトドアと一口に言っても、「非日常」から「限りなく日常に近い何か」になっていると考えることができるようになってきています。同時に、日常の中にかつての非日常が入り込んできているとも言えるのでしょう。となれば、アウトドアの競合はインドアの企業にもなっていくと想像できますし、家具ひとつとっても木工からアウトドアの持ち運び自由なスタイルがインドアに進出していくことも十分に考えられます。というより、すでにそういう状態なんでしょう。

少なくとも新越ワークスにはUNIFLAMEがあり、「アウトドア」を市場に戦っている企業であることに違いはありません。さて、鍵は専門性ということになりますが、登山アイテムやゴルフ要因を扱っているわけではありません。となれば、衣食住ということになり、衣がないので、食と住という考えをしても良さそうです。しかし、この分野は先に述べたように、インドアとのマージが起こっている分野。ホームセンターのアイテムで、アウトドアに行くことができますし、家具屋に行くとアウトドアのアイテムがある時代です。ということで、我々は何に固執していくべきで、同時に何から解放されて視野を広げるべきなのかを常に考え続けなければならないことを意味してはいないでしょうか。それはつまり、無限の可能性とチャレンジができる、ということでもあります。伸び代しかないこの分野を、どのように考えていくのかは自由自在。楽しんでまいりましょう。

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